フルマラソンの30キロ以降で脚が止まる原因は、たいてい根性不足ではなく糖質切れである。エナジージェルのブランドを選ぶときに見るべきは、袋に並んだ勇ましい文字ではなく、1袋あたりの熱量と糖質の種類、カフェインの有無、そして走りながら片手で開けられるかどうか。この鑑定では国内で今も普通に買える主要ブランドを、レース当日の道具として並べている。サブ4を狙う市民ランナー、トレイルで半日動き続ける人、真夏に長い距離を走る自転車乗りまで、補給で一度でも失敗した記憶がある人向けの一覧である。130gのゼリー飲料と40gの薄型ジェルでは携帯の前提がまるで違うので、そこも書き分けた。
選定はまず市販状況の確認から始めた。ヨドバシやアルペン、ドン・キホーテ、薬局、ランネットのような日常の販路で現在も買えるか。そのうえで1袋の熱量(おおむね100kcalから180kcal)、マルトデキストリンや果糖、パラチノースといった糖質の組み合わせ、マグネシウムやアミノ酸、クエン酸などの副材料、粘度と飲みやすさ、40gから130gまでの重さ、1本200円台から900円台まで開く価格、国内製造か輸入かを見比べた。飲み口が本体から切り離されないかどうかという、ゴミを持ち帰る側の事情も評価に含めている。プロテイン専業のブランド、塩タブレットだけの製品、羊羹やバーのような固形の行動食は、比較の土台が違うので入れていない。味の自己評価はどのメーカーも自信満々なので、そこは各自の舌に任せ、数字と入手性を優先した。
順位を決めるのは編集部の好みではなく、読者の投票である。カードには公式サイトと成分の特徴、そして遠慮のない短所を並べた。胃が弱い人、猛暑の大会に出る人、値段に厳しい人で、最適なエナジージェルのブランドは当然違ってくる。カフェイン入りを何本も重ねる予定なら総量の計算も忘れずに。練習で一度も試していない銘柄を本番に持ち込むのも、経験者なら避けたい行為だろう。プラスとマイナス、それに実際に使った人の口コミを読み比べてから、納得した一つに票を入れてほしい。
大阪のSAURUS JAPANが2016年から展開するアミノ酸系の補給ジェル。45gのAMINO SAURUS gelにアルギニン2000mgとシトルリン1000mg、BCAA500mg、マグネシウム50mg、カフェイン75mgを詰め、01マンゴーと02レモンはクエン酸2700mgを配合した機能性表示食品にリニューアルされた。55gのElite 03はカルニチンやナトリウム、カルシウム、ローヤルゼリーまで足した増量版で、ヨドバシでの価格は1本669円。国産原料と国内工場での製造を掲げ、ドン・キホーテや全国のステップスポーツ、大手スポーツ店の棚にも並ぶ。
フルマラソン後半の失速対策として名前が挙がる回数は、ここ数年で国産ブランドの中でも多い方。糖質を大量に流し込む設計ではないため、エネルギー源としては他のジェルとの併用が現実的である。カフェインが1本75mg入るので、レース中に何本も重ねる人は総量の計算が必要。価格は標準品が税込378円から、Eliteは600円台。練習用に箱で消費するには少々贅沢な買い物になる。ヨドバシや楽天、Amazonでは単品から買えるので、まずは1本で胃との相性を見るのが無難である。
クエン酸飲料で25年続く東京品川の株式会社アリストが出す補給食シリーズ。エナジージェルは1個270円(税込)で、リンゴ、グレープフルーツ、ブドウ、コーヒーの4味。シリーズには汗で失うミネラルを狙った塩ジェル、カフェイン200mgとアルギニン1000mg、クエン酸1200mgを詰めた「カフェイン200冴」など、役割の違う小袋が並ぶ。20g前後の小容量が多く、必要な場面だけ足せるのが設計の肝。4味のお試しセットがメール便で届くので、相性を確かめる入口も用意されている。
価格を重視する市民ランナーには古くからの定番で、練習用に箱買いしても財布が軽くなりにくい。ただし最新のデュアルソース設計のような技術で押すブランドではないので、成分表で驚きたい人には向かない。販売は通販中心、店頭在庫は店によってばらつく。「カフェイン200冴」は名前のとおり効くので、夕方以降の使用は寝つきと引き換えになる。単品購入では送料が乗るためまとめ買いが前提になり、賞味期限の近いロットが安く出ることもある。練習用ならそこを狙う手もある。
味の素のスポーツ栄養ブランドで、ジェル状の製品は45gのアミノショット パーフェクトエネルギーと130gのパーフェクトエネルギーの二本立て。45gは109kcalで、アラニンとプロリンを合計2500mg。130gは180kcalとアミノ酸5000mgを含み、どちらも走行中に片手で開封できるパウチ形状を売りにしている。リンとカリウムは検出せずと表示され、販路はドラッグストア、量販店、コンビニまで広い。シリーズ自体はアミノ酸の顆粒やゼリー、プロテインまで広く、ジェルはその一角にすぎない。
入手しやすさでは他の追随を許さない。前日に思い立っても近所で買える安心感は、通販限定のブランドには真似のできない部分である。反面130gタイプはポーチの中で明らかにかさばり、薄型ジェルに慣れた人には邪魔になる。フレーバーはグレープフルーツ味(無果汁)が中心で、長いレースで何本も続けると単調に感じる。糖質補給に特化したジェルと比べると、重さあたりの熱量は控えめ。大会の給水所やエキスポで配られる機会も多く、初めて口にする補給食がこれだった人も多いはずだ。
明治のスポーツ栄養ブランド、ザバスの補給食ライン。エネルギージェルは1本69gで170kcal、糖質はマルトデキストリン、3種のビタミンB群とビタミンC、汗で失うミネラルも入る。栄養ドリンク風味にはカフェインが加わり、ほかにピーチ風味とウメ風味。キャップ付きなので一度に飲み切らず、5キロごとに少しずつという使い方ができる。実売はおおむね200円前後、薬局や量販店で見かける機会が多い。ピットインという名前ではゼリー飲料やエネルギーバーも出ており、ジェルはその中の携帯向けの一本にあたる。
1本170kcalは携帯用ジェルとしては上位の数字で、水に溶かして飲む選択もできる。キャップ式の中では小ぶりだが、45gの薄型パウチと比べれば厚みがあり、タイツの小さなポケットには収まりにくい。プロテインが主役のブランドだけに補給食の新製品は多くなく、味も三種類で止まっている。マグネシウムやアミノ酸の配合を重視する人は、別のブランドを見た方が話が早い。コンビニでも見かける銘柄なので、遠方の大会に忘れ物をしても現地で調達できる可能性が高い。
愛知の株式会社隼が展開する国産の補給ジェル。用途別に三種類で、レース中の糖質補給にポケットエナジー、運動前の一本にエナゲイン、後半の粘りを狙うスピードキュアという構成。ポケットエナジーにはカフェイン入りの金とブースト、チェリーコーヒー味などがあり、公式のHAYATOネットショップでまとめ買いすると割引になる。シクロクロスやマラソン大会への出店協賛が多く、会場で味見してから買う人も少なくない。
小さな会社らしい距離の近さが持ち味で、使い分けの相談にも答えが返ってくる。再注文すると注文本数の10%分が届く継続プログラムも続いている。一方で量販店の棚には並びにくく、急に必要になったときは楽天やAmazonを頼ることになる。三つの役割を理解しないと選びにくいので、初めてなら大会の出店ブースで話を聞くのが結局早い。公式サイトの情報整理も、今どきの基準では素朴。災害時にも使えるオリジナルのエマージェンシーセットまで作る、小回りの利く作り手でもある。
スウェーデン発のハイドロゲル系ジェル。GEL 100は1袋40gで100kcal、炭水化物25gを天然由来のハイドロゲルに包み込み、原材料は6種類だけ。着色料も保存料も香料も入らない。フルクトースとグルコースを0.8対1で組み合わせ、1時間あたり最大100gの糖質摂取を可能にする設計で、カフェイン100mgを足したGEL 100 CAF 100もある。国内の実売は1袋900円前後、ランニング専門店とスポーツ量販の一部が扱う。
高強度で長時間動く人、胃が荒れやすい人が最後に行き着く選択肢として名前が挙がる。味らしい味がないため、甘い香りで気分が悪くなる体質には救いになるが、楽しみは一切ない。価格は国産ジェルの三倍以上で、日々の練習に使うには覚悟が要る。日本語の公式窓口はなく、成分の疑問は取扱店を通して確認する形になる。独特の食感も、初回は面食らう人が多い。カフェイン版は1袋100mgでコーヒー1杯強に相当するので、他のカフェイン入りとの併用は考えて使いたい。
米国カリフォルニアのGU Energy Labsが作る、エナジージェルの代表格のひとつ。1袋100kcalで、マルトデキストリンと果糖を吸収経路の違いを利用して組み合わせ、電解質とアミノ酸も少量入る。エスプレッソラブのようなカフェイン入りが多く、通常の20mgに対して2倍の40mgタイプもある。粘度を落とした液状のリキッドエナジーはオレンジとレモネードの12本入りで、ヨドバシやAmazonでの箱売りが基本の買い方。高負荷向けのROCTANEシリーズはアミノ酸とカフェインを増やした上位版で、用途で選び分けられる。
フレーバーの幅は国産ブランドが追いつけない領域で、甘いジェルに飽きた人がコーヒー系や塩気のある味に逃げ込める。裏返せば甘さと粘度はしっかり強く、水なしで流し込むと口に残る。表示は英語が主体なので、成分を日本語で確かめたい人には不便。24包単位の箱買いが前提になりがちで、一本だけ試せる店は限られる。輸入品ゆえ価格も為替で動く。
トレイルランやウルトラ、アドベンチャーレース向けのギアを作る株式会社インナー・ファクトの補給食。ENERGYは45gで104kcal、パラチノースとはちみつ、MCTオイル、マルトデキストリン、マグネシウムを合わせた中身で税込324円。アミノ酸を入れたRECOVERYは432円、ゆず味などがある。ENERGYの味はグレープフルーツ、グレープ、ピーチ、はちみつレモン風味で、5種5本のお試しセットも用意されている。
吸収の速い糖と持続する糖、そして中鎖脂肪酸を組み合わせた長時間向きの設計で、トレイル系の走者に支持されている。甘さは控えめなので、後半に喉が甘さで詰まる感覚が苦手な人と相性がよい。買う場所は公式オンラインストアが基本、日曜は店休のため注文の返信と発送は翌営業日に回る。生産規模が大きくないので、人気の味は品切れすることもある。補給食はENERGY、RECOVERY、あんこBARのレモンようかん(税込200円)の三品だけという潔い品揃えで、靴下やワラーチが本業という点も含めて変わった会社である。
英国のスポーツ栄養メーカーで、水なしでも飲める等張(アイソトニック)タイプのエナジージェルを世に出したブランドとして知られる。GO Isotonic Energy Gelは1本60mlのパウチで、体液に近い濃度に調整することで胃から水分を奪わない点を売りにしている。高糖質を狙うBeta Fuelはグルコースと果糖を1対0.8で組み合わせた設計で、回復用のREGO、7種のフレーバーを詰めたバリエティパックも揃う。自転車のプロチームへの供給で名前を広げたブランドでもある。
粘度の高いジェルで気分が悪くなる人が試す価値のあるブランド。ただし日本語の正規窓口はなく、輸入取扱の自転車専門店や海外通販が主な入手経路になるため、大会直前の補充は計画的に進める必要がある。1本60mlは薄型ジェルより容量があり、ポーチに何本も差すと膨らむ。価格にも輸入分が乗るので、国産の270円前後のジェルと比べると割高に感じる。等張処方のジェルは世界初とされ、英国のクイーンズアワードも受けている。
トライアスロン誌ルミナを手がけるセロトーレ株式会社(東京都目黒区)の自社ブランド。エナジージェルの販売は2015年に始まり、1袋41gにエネルギー120kcal、炭水化物30gを詰め込んでいる。看板はブランド名どおりの水溶性マグネシウム50mgで、原料には兵庫のタテホ化学工業の国産マグネシウムを使う。レモン、青みかん、ピンクグレープフルーツはカフェイン25mg入り、アップルやグレープフルーツ、梅はノンカフェイン。梅味は食塩相当量0.5gで発汗の多い時期向け。価格は2025年1月に302円から324円(税込)へ改定された。
中身はサラッとした液体寄りで、水なしでも口に残りにくい。フラットパックだからウエストポーチやパンツのポケットに数本まとめても走りの邪魔にならない。ヨドバシや石井スポーツ、ランニング専門店、ルミナの公式通販と扱いが広く、レース直前の買い足しで慌てずに済む。ただしカフェインは25mgと控えめで、終盤にガツンと効かせたい人には物足りない。アミノ酸は入っておらず、糖質とミネラルに割り切った設計。1本324円はジェル全体で見れば中位、コスパ最優先なら選択肢は他にもある。