スマホの写真はすぐ容量を食うし、クラウドの月額を払い続けるのも気が重い。そこで候補に上がるのが個人向けNASストレージで、家のLANにつないでおけば写真も動画も書類も一か所にまとまり、外出先のスマホからも取り出せる。ここではHDDを自分で用意するキット型と、最初からHDDが入っていてLANケーブルをつなぐだけの完成品を、どちらも同じ物差しで並べた。想定しているのは家族の写真整理、パソコンの自動バックアップ、二人から数人でのファイル共有、あとはテレビやプレーヤーへの動画配信あたり。外付けHDDと違って電源を入れたまま置いておく機械なので、静かさと消費電力も無視できない。容量の目安は、写真中心なら2TBから4TB、動画も貯めるなら8TB以上と考えておくと外れにくい。
選定で見たのは、ベイ数とRAIDの組み方、CPUとメモリの余裕、有線が1GbEか2.5GbEか、写真や動画を扱うアプリの出来、そして日本語の窓口があるかどうか。細かいところでは、メモリが増設できるのか基板直付けなのか、M.2スロットが付くか、ファンの音、USBポートの数と外付けHDDへのバックアップ機能まで確認している。安い機種はメモリが固定で後から増やせないものが多く、写真の顔認識や動画の変換をやらせると数年後に差が出る。RAID1は二台のHDDに同じ内容を書くので故障には強いが、消したファイルは戻らないため、外付けやクラウドへの二重化まで考えている機種を優先した。1万円台の入門機と10万円級の4ベイを同じ基準で語っても意味がないので、価格帯ごとに向く使い方を書き分けている。
順位は編集部が固定したものではなく、コミュニティの投票で入れ替わる。だから上から順に買うのではなく、ベイ数と予算で候補を二つか三つに絞り、各カードの長所と短所、実際に使った人の口コミを読み比べるのが早い。とくに短所の欄には、買ってから気づく類の話をまとめてある。動作音や初期設定の面倒さ、付属アプリの癖、HDDを別に買う分の出費など、カタログには書かれない部分なので先に目を通してほしい。ネットワーク機器なので、ルーターの世代や無線の速度で体感が変わる点も頭に入れておきたい。
2ベイのキット型で、HDDは別に用意するタイプ。CPUはインテルCeleron J4125の4コア、メモリはDDR4を2GB搭載し、増設で6GBまで伸ばせる。1GbEのLANポートが二つあり、リンクアグリゲーションでまとめられる。USB 3.2 Gen1が二基。OSはDiskStation Manager 7で、写真整理のSynology Photos、パソコンとの同期を担うDrive、外付けやクラウドへ逃がすHyper Backupがすべて無償で使える。Btrfsを選べばスナップショットで世代を残せるので、うっかり上書きしたファイルも巻き戻せる。
家族数人で写真とパソコンのバックアップを共有する規模なら、性能はかなり余る。QuickSyncを持つCPUなので動画の変換も現実的。一方で2.5GbEやM.2キャッシュ用スロットは省かれていて、大容量の動画を毎日書き戻すような用途では回線が先に頭打ちになる。HDD二台を足すと総額は入門機の三倍近くになるため、まず1ベイで足りる人には過剰。保証は3年で、故障時の窓口が国内にある点は初めての一台としては安心材料。
4ベイのキット型。中身はDS224+と同じCeleron J4125の4コアで、メモリは2GB、最大6GBまで増設可能。特徴は本体裏のM.2 NVMeスロットが二つあること。SSDを読み書きキャッシュに割り当てると、写真アプリのサムネイル表示や小さなファイルの操作が目に見えて軽くなる。HDD四台をRAID5で組めば、一台分の容量を保険に回しつつ残りを実容量として使える構成になる。
写真も動画も家族分まとめて置きたい人、将来HDDを一台ずつ足していきたい人に向く。LANは1GbEが二つで、2.5GbE以上は非対応。拡張ユニットにも対応しないので、四本を使い切ったら本体ごと買い替えるか、より大きな容量のHDDに載せ替える判断になる。本体だけで安いモデルの数倍の価格になり、さらにHDD四台が必要なので、初期投資は素直に重い。静音とは言い切れないファン音があるため、寝室に置く前提なら設置場所を先に決めておきたい。
HDD一台だけを入れる1ベイのキット。CPUはRealtek RTD1619Bの4コア1.7GHz、メモリは1GB固定で増設できない。LANは1GbEが一つ、USB 3.2 Gen1が二つ。安いモデルでもDiskStation Manager 7はほぼ同じものが動くので、Synology PhotosやDrive、外付けHDDへのバックアップといった主要機能はそのまま使える。ベイが一つなのでRAIDは組めず、故障対策はUSB接続の外付けやクラウドへの二重化で補う設計になる。
一人暮らしでスマホの写真を自動で吸い上げたい、ノートパソコンのバックアップ先が欲しい、その程度の用途なら十分。逆に動画のハードウェア変換には対応せず、複数人が同時に大きなファイルを読み書きする場面ではCPUとメモリの余裕がない。メモリ1GBは写真の顔認識のような重い処理では明確に足を引っ張る。HDDは別売なので、本体価格に3TBや4TBのHDD代を足して考える必要がある。
4ベイのキット型で、インテルCeleron N5105の4コアに8GBのDDR4を載せた構成。メモリはSO-DIMMなので最大16GBまで交換できる。2.5GbEのLANポートが二つ、M.2 2280 NVMeスロットが二つ、PCIeスロットが一つ用意され、10GbEカードを後から追加する余地まで残っている。HDMI出力を持つので、本体をテレビにつないで動画を再生する使い方もできる。OSはQTS 5のほか、条件を満たせばZFSのQuTS heroに切り替えられる。
拡張の自由度を優先する人には向く一台。写真管理のQuMagie、バックアップのHybrid Backup Syncなど純正アプリも揃っている。ただ設定項目が多く、初期のセットアップで戸惑いやすい。ファンと4台のHDDが回るので動作音もそれなりで、静かな部屋に置くなら覚悟がいる。価格は4ベイの中でも高い側で、HDDを別に買う前提だと総額はさらに上がる。ネットワーク側も2.5GbE対応のルーターやハブがないと性能を出し切れない。
QNAPの中でも入門クラスに置かれた2ベイのキット。CPUはARMのCortex-A55を4コア2.0GHz、メモリはDDR4を2GB搭載するが基板直付けで増設はできない。LANは1GbEが一つ、USB 3.2 Gen1が一つとUSB 2.0が二つ。縦置きの細身な筐体で、机の脇にも置きやすいサイズ感。写真をまとめるQuMagieやスマホアプリのQfile、外付けHDDへのバックアップといった基本機能は上位機と共通で使える。
HDD二台をRAID1で組んで、写真と書類の置き場にする使い方が一番はまる。ARM系CPUなので動画のトランスコードや仮想化には期待できず、大量の写真のAI分類を回すと待たされる。メモリを増やせないので、後から欲張った使い方に切り替えづらいのも弱点。ネットワークも1GbEどまりで、動画編集の作業用ドライブには不向き。初めてのNASとして価格を抑えたい人向けの選択肢になる。
2TBのHDDを二台内蔵した2ベイの完成品で、合計4TB。届いたらLANケーブルと電源をつなぐだけで動き、HDDを別に買う必要がない。有線は2.5GbE対応で、対応ルーターやハブと組み合わせれば1GbEより転送に余裕が出る。RAID1のミラーリングとRAID0を選べ、初期設定ではスマホアプリやブラウザの管理画面から進められる。故障の兆候を知らせる機能や、外付けUSB HDDへのバックアップ、DLNA配信、Time Machineのバックアップ先としての利用にも対応する。
パソコンとスマホのデータを家族で共有したい、けれどキット型の組み立てや初期化は面倒、という層向け。日本語のマニュアルと国内の問い合わせ窓口があるので、詰まったときに調べやすい。ただ拡張性は低く、機能をアプリで足していくSynologyやQNAPのような遊びはできない。HDDが最初から入っている分、容量を後で増やすには本体交換に近い作業になる点も理解しておきたい。
2TBのHDDを内蔵した1ベイの完成品で、価格はこの一覧でもっとも安い部類。ファンを持たない構造なので動作音は静かで、リビングや寝室にも置きやすい。ネットワークは1GbEが一つ。スマホアプリからの写真バックアップ、外出先からのアクセス、DLNAでのテレビ再生、外付けUSB HDDへのバックアップといった家庭で使う機能はひととおり揃っている。設定はブラウザとスマホアプリの案内に従うだけで、専門知識はほぼ不要。
とりあえずNASを試したい人、家族の写真と書類の共有場所を安く作りたい人に向く。ベイが一つなのでミラーリングはできず、HDDが壊れたら中身は消える前提で外付けやクラウドへ二重化する運用が必須になる。CPUは非力で、複数人が同時に大きなファイルを扱うと待たされる。動画編集の素材置き場や、アプリを追加して遊ぶ用途には合わない。あくまで入門機として割り切る一台。
2TBのHDDを二台搭載した2ベイのNASで、合計4TB。デュアルコアCPUを積んだLAN DISK Aシリーズの一台で、購入後はブラウザから初期設定を済ませればそのまま共有フォルダーが使える。ミラーリング構成にすればHDD一台が壊れてもデータは残る。外付けUSB HDDへのバックアップ、スマホアプリのRemote Link Filesを使った外出先からのアクセス、Time Machineのバックアップ先としての利用にも対応している。
国内メーカーの安心感を重視する人、電話で相談できる窓口が欲しい人に向く構成。管理画面もアプリも日本語なので、家族の誰でも触れる。反面、機能を後から足す仕組みは持たず、写真のAI分類や仮想化のような遊びは範囲外。ネットワークは1GbEで、動画の大量書き戻しには物足りない。HDDが内蔵済みのため、容量を増やしたい場合は上位容量のモデルを買い直すか、外付けを足す判断になる。
2TBのHDDを内蔵した1ベイのエントリーモデル。縦置きの小さな筐体で、電源とLANをつなげば数分で共有フォルダーが見える状態になる。ネットワークは1GbEが一つ。スマホやタブレットからのアクセスに対応し、Remote Link Filesを入れれば外出先から写真や書類を取り出せる。パソコンのバックアップ先として使うほか、USB接続の外付けHDDへ中身を写して二重化する運用もできる。
初めてのNASで、価格をできるだけ抑えたい人向け。難しい設定はほとんど出てこないので、機械が苦手な家族と共有する場所にも使いやすい。ただしベイが一つでRAIDは組めず、内蔵HDDが故障すればデータは失われる。処理性能も控えめで、大きな動画を複数人で同時に再生するような使い方は想定外。長く使うつもりなら、最初から2ベイのモデルを選んだほうが後悔は少ない。
4ベイのキット型で、インテルN95の4コアにDDR5メモリ8GBという構成。メモリは交換で32GBまで対応する。2.5GbEのLANポートが二つ、M.2 NVMeスロットが二つあり、この価格帯としては入出力が贅沢な部類に入る。OSは自社製のTOS 6で、RAID 0/1/5/6/10に対応し、Dockerや各種バックアップアプリも用意されている。HDDの装着はトレイ式で、工具なしで進められる。
同じ性能を他社の4ベイで揃えると価格が上がるため、コスト重視で構成を積みたい人には現実的な選択。ただしアプリの数と完成度はSynologyやQNAPには届かず、細かい不満は残りやすい。日本語の情報が少なく、トラブル時は公式ドキュメントや海外の掲示板を読む覚悟が必要。国内の販売経路も量販店より通販が中心で、初めてNASを触る人が最初に選ぶ機種としてはハードルが高い。